CoCo債(Contingent Convertible Bond / 偶発転換社債) とは、発行体(主に銀行)の自己資本比率が一定水準を下回った場合に、自動的に株式に転換されるか元本が削減される特殊な債券です。AT1債(Additional Tier 1)とも呼ばれ、高い利回りが特徴ですが、損失吸収リスクがあります。
CoCo債の仕組み
通常時:
・高い利率(クーポン)を受け取る
・普通の債券と同様に利息を享受
トリガー発動時(自己資本比率が基準を下回る):
パターン1: 株式転換型
→ 債券が強制的に株式に転換される
→ 株価下落中に転換されるため大幅な損失
パターン2: 元本削減型
→ 元本が一部または全額削減される
→ 投資元本の一部または全部を失う
CoCo債のトリガー
| トリガー |
説明 |
| 機械的トリガー |
CET1比率が一定水準(例: 5.125%)を下回る |
| 裁量トリガー |
規制当局が「存続不能」と判断した場合 |
CET1比率(普通株式等Tier1比率):
= 普通株式等Tier1資本 ÷ リスク加重資産
例:
CET1比率が5.125%を下回った場合にトリガー発動
→ 債券が株式に転換 or 元本削減
CoCo債が生まれた背景
| 時期 |
出来事 |
| 2008年 |
世界金融危機で銀行の資本不足が露呈 |
| 2010年 |
バーゼルIII規制で銀行の資本増強が要求 |
| 2011年〜 |
欧州の銀行を中心にCoCo債の発行が本格化 |
| 2023年 |
クレディ・スイスのAT1債が全額無価値化 |
クレディ・スイスのAT1債無価値化(2023年)
経緯:
・クレディ・スイスの経営不安が深刻化
・2023年3月、UBSによる救済合併が決定
・約160億スイスフラン(約2.4兆円)のAT1債が全額無価値化
・一方、株主には一定の対価が支払われた
問題点:
・通常の優先順位: 債券保有者 > 株主
・今回: 株主に対価あり、AT1債は全額損失
→ CoCo債/AT1債のリスクが改めて認識される契機に
CoCo債のメリット
| メリット |
説明 |
| 高い利回り |
通常の社債より数%高い利回り |
| 分散投資効果 |
株式・債券の中間的な性質 |
| 大手銀行の発行 |
発行体の信用力は比較的高い |
| 定期的な利息 |
トリガー未発動なら高い利息を受領 |
CoCo債のリスク
| リスク |
説明 |
| トリガーリスク |
自己資本比率低下で元本喪失 |
| 利息停止リスク |
発行体の判断で利息が停止されうる |
| 繰上償還の不確実性 |
コール(繰上償還)されない場合がある |
| 流動性リスク |
市場のストレス時に売却が困難 |
| 複雑な商品性 |
条件の理解が難しい |
| 劣後リスク |
破綻時の弁済順位が低い |
CoCo債の弁済順位
弁済順位(高い順):
1. 預金(預金保険対象)
2. 一般社債(シニア債)
3. Tier2債(劣後債)
4. AT1債 / CoCo債 ← ここ
5. 普通株式
→ CoCo債は株式の次に損失を吸収する
→ 「債券」だが実質的に株式に近いリスク
CoCo債と他の債券の比較
| 項目 |
普通社債 |
劣後債 |
CoCo債 |
| 利回り |
低 |
中 |
高 |
| 弁済順位 |
高 |
中 |
低 |
| 元本リスク |
低 |
中 |
高 |
| 利息停止リスク |
なし |
低 |
あり |
| 満期 |
あり |
あり |
永久債が多い |
CoCo債への投資方法
| 方法 |
説明 |
| 直接購入 |
大口投資家向け(最低投資額が高い) |
| 投資信託 |
CoCo債に投資するファンドを購入 |
| ETF |
CoCo債/AT1債に連動するETF |
CoCo債投資の注意点
| 注意点 |
説明 |
| 発行体の健全性 |
CET1比率の推移を定期的に確認 |
| トリガー水準 |
何%で発動するか事前に確認 |
| 商品性の理解 |
転換型か削減型かを把握 |
| 分散投資 |
特定の発行体に集中しない |
| リスク許容度 |
元本喪失リスクを受け入れられるか |
Welvioでの活用
WelvioでCoCo債を含む高利回り債券のリスク・リターン特性を理解し、ポートフォリオの利回り向上とリスク管理のバランスを検討できます。