繰延税金資産(Deferred Tax Asset / DTA) とは、会計上の費用計上と税務上の損金算入のタイミングのずれ(一時差異)により、将来支払う税金が減額される効果を、資産として貸借対照表に計上したものです。
繰延税金資産の仕組み
会計上の利益 < 税務上の所得(課税所得)
→ 今期は税金を多く払っている
→ 将来、その差異が解消されると税金が減る
→ 将来の税金減額分を「繰延税金資産」として計上
具体例
| 項目 |
会計上 |
税務上 |
差異 |
| 賞与引当金 |
今期に費用計上 |
支払時に損金算入 |
一時差異 |
| 減損損失 |
今期に費用計上 |
売却時に損金算入 |
一時差異 |
| 貸倒引当金 |
見積もりで費用計上 |
一定限度を超える部分は損金不算入 |
一時差異 |
| 繰越欠損金 |
- |
将来の課税所得と相殺可能 |
一時差異に準じる |
繰延税金資産と繰延税金負債
| 項目 |
繰延税金資産 |
繰延税金負債 |
| 意味 |
将来の税金が減る |
将来の税金が増える |
| 発生パターン |
会計上先に費用計上 |
会計上先に利益計上 |
| B/S上の位置 |
資産(固定資産) |
負債(固定負債) |
投資家にとっての重要性
| ポイント |
内容 |
| 回収可能性 |
将来十分な利益が出なければ資産価値がなくなる |
| 取り崩しリスク |
業績悪化で回収可能性が低下すると取り崩しが必要 |
| 利益への影響 |
取り崩し時に多額の損失が発生する |
| 自己資本への影響 |
取り崩しは自己資本の減少につながる |
繰延税金資産の取り崩しが起きるケース
| ケース |
影響 |
| 業績の大幅悪化 |
将来の課税所得の見積もりが下がる |
| 事業撤退 |
対象事業からの収益がなくなる |
| 税率変更 |
法人税率引き下げで資産価値が減少 |
| 監査法人の判断変更 |
回収可能性の見積もりが厳格化 |
回収可能性の分類(日本基準)
| 分類 |
企業の状況 |
計上できる範囲 |
| 分類1 |
安定的に十分な課税所得 |
全額計上可能 |
| 分類2 |
おおむね安定的に課税所得 |
スケジューリング可能な範囲 |
| 分類3 |
課税所得はあるが不安定 |
将来5年以内に解消見込みの範囲 |
| 分類4 |
重要な税務上の欠損金あり |
翌期の見積課税所得の範囲 |
| 分類5 |
継続的に欠損 |
原則として計上不可 |
注意点
- 繰延税金資産は「将来の利益」を前提とする見積もりベースの資産
- 計上額が大きい企業は、取り崩しリスクに注意が必要
- 自己資本に対する繰延税金資産の比率が高いと財務の健全性に疑問
- 有価証券報告書の税効果会計の注記で詳細を確認できる
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