フィリップス曲線(Phillips Curve) とは、失業率とインフレ率(賃金上昇率)の間に逆相関の関係があることを示す経済理論です。1958年にA.W.フィリップスが英国のデータから発見しました。
フィリップス曲線の基本
基本的な関係:
失業率が低い ← → インフレ率が高い
失業率が高い ← → インフレ率が低い
つまり:
景気が良い → 人手不足 → 賃金上昇 → 物価上昇
景気が悪い → 失業増加 → 賃金停滞 → 物価安定
→ 失業率とインフレ率にはトレードオフがある
フィリップス曲線のイメージ
| 失業率 |
インフレ率 |
状態 |
| 2% |
4% |
好景気・インフレ |
| 3% |
3% |
バランス |
| 4% |
2% |
やや景気減速 |
| 5% |
1% |
景気悪化・物価安定 |
| 7% |
0% |
不況・デフレ懸念 |
NAIRU(自然失業率)
NAIRU = Non-Accelerating Inflation Rate of Unemployment
(インフレを加速させない失業率)
失業率がNAIRU以下:
→ 人手不足が深刻
→ 賃金上昇が加速
→ インフレが加速
失業率がNAIRU以上:
→ 労働市場にゆとり
→ 賃金上昇が鈍化
→ インフレが鈍化
米国のNAIRU: 約4.0%(推定)
日本のNAIRU: 約2.5%(推定)
短期と長期のフィリップス曲線
| 期間 |
関係 |
説明 |
| 短期 |
逆相関あり |
失業率低下→インフレ上昇 |
| 長期 |
垂直(トレードオフなし) |
長期的には自然失業率に収束 |
長期フィリップス曲線
長期的には:
金融緩和で失業率を一時的に下げても
→ インフレ期待が上昇
→ 実質賃金は変わらず
→ 失業率は自然失業率に戻る
つまり:
長期的にはインフレ率と失業率の
トレードオフは消滅する
→ 長期フィリップス曲線は垂直
フィリップス曲線と金融政策
| 政策 |
失業率 |
インフレ率 |
| 金融緩和 |
低下 |
上昇 |
| 金融引き締め |
上昇 |
低下 |
| 中立 |
NAIRU付近 |
目標付近 |
フィリップス曲線の変遷
1960年代:
フィリップス曲線が有効
→ 失業率を下げたければインフレを容認
1970年代(スタグフレーション):
失業率もインフレ率も高い
→ フィリップス曲線が崩壊?
→ 期待の役割が重要と認識
2010年代:
失業率が低下してもインフレが上がらない
→ フィリップス曲線がフラット化?
→ グローバル化、技術革新の影響
2020年代:
コロナ後にインフレが急上昇
→ フィリップス曲線が再び注目
スタグフレーション
| 項目 |
説明 |
| 定義 |
景気停滞とインフレの同時発生 |
| フィリップス曲線との関係 |
曲線自体が右方にシフト |
| 原因 |
供給ショック(石油危機等) |
| 政策の困難さ |
緩和も引き締めも問題 |
フィリップス曲線と株式市場
フィリップス曲線がスティープ(急):
失業率の小さな変化で大きなインフレ変動
→ 金融政策が頻繁に変更
→ 株式市場のボラティリティ上昇
フィリップス曲線がフラット(平坦):
失業率が下がってもインフレが上がりにくい
→ 金融緩和が長期化しやすい
→ 株式市場に好環境(ゴルディロックス)
投資判断への活用
| 分析 |
内容 |
| 雇用統計 |
失業率の変化でインフレの方向性を予測 |
| 金融政策予測 |
失業率とインフレの組み合わせで利上げ・利下げを予測 |
| セクター選択 |
インフレ環境に応じたセクターローテーション |
| 債券投資 |
インフレ期待の変化で金利の方向性を判断 |
賃金版フィリップス曲線
賃金上昇率と失業率の関係:
失業率低下 → 人手不足 → 賃金上昇
→ 企業のコスト増
→ 製品価格に転嫁
→ インフレに波及
日本の場合:
長期間、失業率が低下しても賃金が上がらなかった
→ 非正規雇用の増加
→ 賃金版フィリップス曲線がフラット化
フィリップス曲線の注意点
| 注意点 |
説明 |
| 推定の難しさ |
NAIRUは直接観測できない |
| 構造変化 |
グローバル化で関係が変化 |
| 供給ショック |
供給側の要因で曲線がシフト |
| 期待の重要性 |
インフレ期待が曲線を動かす |
Welvioでの活用
Welvioで失業率とインフレ率の関係を確認し、金融政策の方向性や景気サイクルの位置を把握して投資判断の参考にできます。