60代の資産運用の特徴
60代は 「貯める」から「使う」への転換期 です。退職金を受け取り、年金生活が始まるこの時期は、資産を守りながら計画的に取り崩す戦略が求められます。「運用しない」のではなく、 「守りながら運用を続ける」 ことがポイントです。
60代の強み
- 退職金 という大きな資金を活用できる
- 住宅ローン完済済み のケースが多く、固定支出が減少
- 子どもが独立 し、自分のための資産活用が可能
- 時間に余裕 ができ、資産管理に集中できる
60代の課題
- 定期収入の減少 :現役時代と比べて大幅にダウン
- インフレリスク :退職後20〜30年の物価上昇への備え
- 医療・介護費用 :健康リスクに伴う支出増加
- 資産寿命 :資産が尽きる前に対策が必要
60代の収入源と資金フロー
退職後の主な収入源を把握し、不足額を運用でカバーする計画を立てましょう。
60代の収入源一覧
| 収入源 | 開始年齢 | 月額目安 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 再雇用・嘱託給与 | 60〜65歳 | 15〜25万円 | 現役時の50〜70%程度 |
| 厚生年金 | 65歳〜 | 14〜16万円 | 夫婦で月22〜28万円程度 |
| iDeCo受取 | 60〜75歳 | 一時金or年金 | 受取方法を選択 |
| 新NISA取り崩し | いつでも | 必要に応じて | 非課税で引き出し可能 |
| 退職金 | 60〜65歳 | 一時金or年金 | 受取方法を選択 |
月額収支のシミュレーション
| 項目 | 60〜64歳(再雇用) | 65歳〜(年金生活) |
|---|---|---|
| 収入 | 再雇用20万円 | 年金22万円(夫婦) |
| 生活費 | 28万円 | 26万円 |
| 不足額 | 月8万円 | 月4万円 |
| 年間不足額 | 96万円 | 48万円 |
不足額を資産の取り崩しや運用益で補うことが、60代の資産運用の基本です。
退職金の賢い活用法
退職金は60代最大の資金イベントです。受け取り方と運用方法で、老後の安心度が大きく変わります。
受け取り方の比較
| 方式 | 課税方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 一時金 | 退職所得控除で大幅な税優遇 | 税負担が軽い | 一度に使ってしまうリスク |
| 年金 | 雑所得(公的年金等控除適用) | 定期収入として計画的に受取 | 受取期間中の運用リスク |
| 併用 | 両方の控除を活用 | 節税と安定収入を両立 | 計算が複雑 |
退職所得控除の計算
勤続20年以下:40万円 × 勤続年数
勤続20年超 :800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)
例:勤続38年の場合
800万円 + 70万円 × 18年 = 2,060万円まで非課税
退職金2,000万円の活用例
| 用途 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 生活防衛資金 | 500万円 | 生活費2年分を現金で確保 |
| 新NISAでの投資 | 600万円 | 3年に分けて年200万円ずつ |
| 債券・バランスファンド | 600万円 | 安定運用で取り崩し原資に |
| 予備費(医療・介護) | 300万円 | 定期預金・個人向け国債 |
鉄則: 退職金を一括で投資に回さないこと。生活防衛資金と予備費を確保したうえで、残りを時間分散で投資しましょう。
年金の受け取り戦略
年金の受給開始年齢の選択は、生涯の受取総額に大きく影響します。
繰上げ・繰下げ受給の比較
| 受給開始 | 増減率 | 月額目安(本来16万円の場合) | 損益分岐年齢 |
|---|---|---|---|
| 60歳(繰上げ) | −24% | 約12.2万円 | 約81歳 |
| 65歳(通常) | ±0% | 16万円 | − |
| 70歳(繰下げ) | +42% | 約22.7万円 | 約82歳 |
| 75歳(繰下げ) | +84% | 約29.4万円 | 約87歳 |
繰下げ受給が向いている人
- 再雇用や自営で65歳以降も収入がある
- 新NISAやiDeCoなど、年金以外に取り崩せる資産がある
- 家系的に長寿の傾向がある
- 年金を増やして安定収入を確保したい
繰上げ受給が向いている人
- 健康上の不安があり、早めに受け取りたい
- 65歳まで収入がなく、生活費が不足する
- 他の資産が少なく、すぐに現金が必要
在職老齢年金に注意
60〜65歳で再雇用等で働く場合、給与と年金の合計が 月62万円 を超えると年金が減額されます(2026年4月施行の改正で従来の50万円から引き上げ)。多くの方が減額を気にせず働けるようになりましたが、高収入の方は引き続き注意が必要です。
60代のポートフォリオ
60代は 「守り」を重視しつつ、インフレに負けない運用 を目指します。
60代前半(60〜64歳)
| 資産クラス | 積極運用 | 標準運用 | 安定運用 |
|---|---|---|---|
| 全世界株式 | 40% | 30% | 20% |
| 先進国債券 | 25% | 30% | 30% |
| 国内債券 | 15% | 20% | 25% |
| 現金・預金 | 20% | 20% | 25% |
60代後半(65〜69歳)
| 資産クラス | 積極運用 | 標準運用 | 安定運用 |
|---|---|---|---|
| 全世界株式 | 30% | 25% | 15% |
| 先進国債券 | 25% | 30% | 30% |
| 国内債券 | 20% | 25% | 30% |
| 現金・預金 | 25% | 20% | 25% |
なぜ60代でも株式を保有するのか
60代でも運用期間は20〜30年あります。すべてを預金にすると インフレで実質的に目減り します。
年2%のインフレが20年続いた場合:
1,000万円の実質価値 → 約672万円(約33%の目減り)
株式を一定割合保有することで、インフレに対抗しながら資産寿命を延ばせます。
資産の取り崩し戦略
60代後半からは、資産を計画的に取り崩すフェーズに入ります。
定額取り崩し vs 定率取り崩し
| 方法 | 仕組み | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 定額取り崩し | 毎月一定額を引き出す | 生活設計がしやすい | 相場下落時に資産が急減 |
| 定率取り崩し | 資産残高の一定割合を引き出す | 資産が長持ちしやすい | 引き出し額が変動する |
定率取り崩しのシミュレーション
資産3,000万円を年4%で取り崩す場合(運用リターン年3%想定):
| 年数 | 資産残高 | 年間引出額 | 月額 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 3,000万円 | 120万円 | 10.0万円 |
| 5年目 | 約2,870万円 | 115万円 | 9.6万円 |
| 10年目 | 約2,710万円 | 108万円 | 9.0万円 |
| 20年目 | 約2,420万円 | 97万円 | 8.1万円 |
※年4%取り崩し・年3%運用リターンの場合、年間で約1%ずつ緩やかに減少する概算値
取り崩し順序の優先度
| 優先順位 | 資産 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 課税口座(特定口座) | 運用益に税金がかかるため先に取り崩す |
| 2 | iDeCo(受取時期に注意) | 退職所得控除・公的年金等控除を活用 |
| 3 | 新NISA | 非課税メリットを最大化するため最後に |
| 4 | 現金・預金 | 生活防衛資金として常に一定額を確保 |
iDeCoの受け取り方
60代でiDeCoの受け取りを開始する方が多いです。節税を最大化する受け取り方を検討しましょう。
受取方法の選択肢
| 方式 | 税制上の扱い | ポイント |
|---|---|---|
| 一時金 | 退職所得 | 退職所得控除が使える。退職金との受取間隔に注意 |
| 年金 | 雑所得 | 公的年金等控除が適用。他の年金と合算で課税 |
| 併用 | 両方の控除 | 一部を一時金、残りを年金で受け取り節税を最大化 |
退職金とiDeCoの受取タイミング
退職金とiDeCoの一時金を近い時期に受け取ると、退職所得控除の重複期間分が差し引かれ、控除額が不利になります。受取順序によってルールが異なります(2026年1月施行の税制改正反映)。
- iDeCo先 → 退職金後 :iDeCo受取から 10年超 空けると退職金の退職所得控除が満額適用(改正前は5年)
- 退職金先 → iDeCo後 :退職金受取から 20年超 空けるとiDeCoの退職所得控除が満額適用(従来通り)
例:60歳で退職金を受取 → iDeCoは65歳以降に一時金で受取
(受取間隔が5年のため、重複する加入期間分の控除が調整される)
医療・介護への備え
60代は医療・介護費用への備えが重要になります。
医療費の目安
| 年齢 | 自己負担割合 | 年間医療費(平均) |
|---|---|---|
| 60〜69歳 | 3割 | 約20〜30万円 |
| 70〜74歳 | 2割 | 約15〜25万円 |
| 75歳〜 | 1割(一定以上は2割、現役並みは3割) | 約10〜20万円 |
介護費用の目安
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 介護の平均期間 | 約4年7ヶ月 |
| 一時的な費用(住宅改修等) | 平均47万円 |
| 月額費用 | 平均9.0万円 |
| 介護にかかる総額 | 約540万円 |
※生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」参考
医療・介護費用として 500〜600万円 を予備費として確保しておくと安心です。
60代で避けたい失敗
1. 退職金を銀行の営業に乗せられて投資
退職金入金後に銀行や証券会社から「特別プラン」の案内が届きますが、手数料の高い投資信託や仕組債が含まれていることが多いです。自分で低コストのインデックスファンドを選びましょう。
2. 資産をすべて預金にする
元本は守れますが、インフレで実質的に目減りします。20年後には購買力が大幅に低下するリスクがあります。
3. 取り崩し計画を立てない
「なんとなく」使っていると、想定より早く資産が枯渇します。年間の取り崩し額と資産寿命を計算しておきましょう。
4. 年金制度を理解しないまま受給開始
繰下げ受給で年金を最大84%増額できる可能性を知らずに、65歳で受け取り始めるケースが多いです。自分の状況に最適な受給開始時期を検討しましょう。
5. 相続対策を後回しにする
相続は元気なうちに準備すべきテーマです。遺言書の作成、贈与の活用、不動産の整理など、早めの着手が大切です。
70代に向けての準備
確認・検討すべきこと
- 後期高齢者医療制度 :75歳からの医療費負担の仕組みを理解する
- 資産の簡素化 :複数の口座をまとめ、管理しやすい状態に
- 認知症対策 :家族信託や任意後見制度の検討
- 相続計画 :遺言書の作成、生前贈与の実施
資産管理の引き継ぎ
| 対策 | 概要 | 目安時期 |
|---|---|---|
| 資産一覧の作成 | すべての口座・資産をリスト化 | 60代のうちに |
| 家族への共有 | 資産状況を配偶者・子どもと共有 | 60代のうちに |
| 家族信託 | 認知症に備えて信託契約を締結 | 70歳頃まで |
| 遺言書 | 法的に有効な遺言書を作成 | 70歳頃まで |
Welvioでの活用
Welvioを使えば、60代の複雑な資産管理を一元的に把握できます。
- 取り崩しシミュレーション :現在の資産で何歳まで生活費を賄えるか試算
- 複数口座の一元管理 :新NISA、iDeCo、特定口座、退職金運用口座をまとめて可視化
- 資産配分の確認 :年齢に合った守りのポートフォリオになっているかチェック
- 目標達成率の追跡 :資産寿命の目標に対する進捗を確認
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