DCF法(Discounted Cash Flow、割引キャッシュフロー法) とは、企業が将来生み出すキャッシュフローを適切な割引率で現在価値に換算し、企業の本質的価値を算出する手法です。
DCF法の基本的な考え方
企業価値 = 将来のキャッシュフローの現在価値の合計
今日の100万円 ≠ 1年後の100万円
→ 1年後の100万円は今日の約95万円(割引率5%の場合)
→ 将来のお金ほど現在価値は小さくなる
DCF法の計算ステップ
| ステップ |
内容 |
| 1. FCFの予測 |
将来5〜10年のフリーキャッシュフローを予測 |
| 2. 割引率の決定 |
WACC(加重平均資本コスト)を計算 |
| 3. 現在価値に割引 |
各年のFCFを現在価値に換算 |
| 4. ターミナルバリュー |
予測期間以降の価値を算出 |
| 5. 合計 |
FCFの現在価値 + ターミナルバリューの現在価値 |
DCF法の計算例
前提:
WACC(割引率): 8%
予測期間: 5年
年度 FCF 割引係数 現在価値
1年目 100億円 1/(1.08)^1 92.6億円
2年目 110億円 1/(1.08)^2 94.3億円
3年目 120億円 1/(1.08)^3 95.3億円
4年目 130億円 1/(1.08)^4 95.6億円
5年目 140億円 1/(1.08)^5 95.3億円
合計: 473.1億円
ターミナルバリュー(永続成長率2%):
TV = 140億 × (1+0.02) ÷ (0.08-0.02) = 2,380億円
TVの現在価値 = 2,380 ÷ (1.08)^5 = 1,619億円
企業価値 = 473.1 + 1,619 = 約2,092億円
DCF法のメリット
| メリット |
説明 |
| 本質的価値 |
市場の一時的な評価に左右されない |
| 将来の成長を反映 |
成長企業の価値を適切に評価 |
| 前提の明確化 |
仮定が明示的で検証可能 |
| 比較可能 |
異なる業種の企業も比較できる |
DCF法のデメリット
| デメリット |
説明 |
| 予測の不確実性 |
将来のFCF予測は難しい |
| 前提への依存度 |
割引率や成長率で結果が大きく変わる |
| 複雑さ |
計算が煩雑で専門知識が必要 |
| 赤字企業に不向き |
FCFがマイナスの企業には適用困難 |
感度分析
割引率と成長率による企業価値の変化:
成長率1% 成長率2% 成長率3%
WACC 7% 2,567億 3,100億 3,900億
WACC 8% 2,067億 2,432億 2,950億
WACC 9% 1,713億 1,975億 2,333億
→ 前提の小さな変化で結果が大きく変動
→ 感度分析で範囲を把握することが重要
DCF法と他の手法の比較
| 手法 |
特徴 |
| DCF法 |
将来のCFから算出、本質的価値 |
| PER |
利益の倍率、簡便だが成長性を反映しにくい |
| PBR |
資産ベース、成長企業に不向き |
| EV/EBITDA |
借入構造の影響を排除 |
個人投資家がDCF法を使うコツ
簡易DCF:
1. 来期のFCF予測を使う
2. 成長率は保守的に(2〜3%)
3. 割引率は8〜10%
4. ターミナルバリューは永続成長モデル
チェック:
・算出した企業価値 > 時価総額 → 割安
・算出した企業価値 < 時価総額 → 割高
・マージンオブセーフティ(30%以上)を確保
DCF法の注意点
| 注意点 |
説明 |
| GIGO |
前提が間違えば結果も間違う |
| ターミナルバリュー |
全体の60〜80%を占めることが多い |
| 定期的な見直し |
前提が変わったら再計算 |
| 複数シナリオ |
楽観・中立・悲観の3パターン推奨 |
Welvioでの活用
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