下方偏差(Downside Deviation) とは、目標リターンまたはゼロを下回るマイナスのリターンのみを対象に計算した標準偏差です。投資家が本当に気にする「下落リスク」だけを測定します。
下方偏差と標準偏差の違い
標準偏差:
すべてのリターンの変動を測定
上昇も下落も「リスク」として扱う
下方偏差:
目標を下回るリターンのみを測定
上昇は「リスク」として扱わない
→ 下方偏差の方が投資家の実感に近い
下方偏差の計算方法
1. 目標リターン(MAR: Minimum Acceptable Return)を設定
例: 0%、または無リスク金利
2. 目標を下回ったリターンのみを抽出
3. 下方偏差を計算:
√(Σ(下回ったリターン - 目標)² ÷ N)
計算例
月次リターン: +5%, -3%, +2%, -4%, +6%, -1%
目標リターン: 0%
下回った月のみ抽出: -3%, -4%, -1%
下方偏差 = √((3² + 4² + 1²) ÷ 6)
= √(26 ÷ 6)
= √4.33
= 2.08%
下方偏差の利用場面
| 活用法 |
説明 |
| ソルティノレシオ |
リターン ÷ 下方偏差 |
| リスク評価 |
下落リスクのみを測定 |
| ファンド比較 |
下落リスクが小さいファンド選択 |
| ポートフォリオ構築 |
下方リスク最小化 |
下方偏差と標準偏差の比較例
ファンドA:
平均リターン 10%、標準偏差 15%、下方偏差 8%
→ 変動は大きいが下落リスクは小さい
ファンドB:
平均リターン 10%、標準偏差 15%、下方偏差 12%
→ 変動の多くが下落によるもの
→ Aの方が投資家にとってリスクが小さい
ソルティノレシオとの関係
ソルティノレシオ = (リターン - 目標リターン) ÷ 下方偏差
シャープレシオとの違い:
シャープレシオ = (リターン - 無リスク金利) ÷ 標準偏差
ソルティノレシオの方が投資家の実感に近い
下方偏差の解釈
| 下方偏差の大きさ |
意味 |
| 小さい |
下落時の損失が限定的 |
| 大きい |
下落時の損失が大きい |
| 標準偏差に近い |
下落が変動の大部分を占める |
| 標準偏差より小さい |
上昇の変動が大きい |
下方偏差のメリット
| メリット |
説明 |
| 直感的 |
投資家が気にする下落リスクを直接測定 |
| 非対称リスク |
上昇と下落を区別できる |
| ソルティノレシオ |
より適切なリスク調整後リターン |
下方偏差の注意点
| 注意点 |
説明 |
| 目標設定 |
目標リターンの設定に主観が入る |
| データ期間 |
短期間では精度が低い |
| 正規分布 |
分布が歪んでいる場合に有効 |
| 計算複雑 |
標準偏差より計算が複雑 |
目標リターンの設定
| 目標 |
使用場面 |
| 0% |
元本割れリスクを測定 |
| 無リスク金利 |
国債を上回るリターン |
| インフレ率 |
実質リターン |
| 個人目標 |
年金運用など |
下方偏差を小さくする方法
| 方法 |
説明 |
| 分散投資 |
異なる資産への分散 |
| ヘッジ |
プットオプション、逆相関資産 |
| ディフェンシブ銘柄 |
景気の影響を受けにくい銘柄 |
| タイミング |
過熱時の買い控え |
Welvioでの活用
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