総賃料乗数(GRM: Gross Rent Multiplier) とは、不動産の価格が年間の総賃料収入の何倍に相当するかを示す指標です。不動産投資の割安・割高を簡便に比較する際に使われます。
GRMの計算式
GRM = 不動産価格 ÷ 年間総賃料収入
例:
物件価格: 5,000万円
年間賃料収入: 400万円
GRM = 5,000万円 ÷ 400万円 = 12.5倍
→ 賃料収入の12.5年分で物件価格に相当
GRMの目安
| GRM |
評価 |
| 10倍以下 |
割安(高利回り) |
| 10〜15倍 |
標準的 |
| 15〜20倍 |
やや割高 |
| 20倍以上 |
割高(低利回り) |
GRMと表面利回りの関係
GRMと表面利回りは逆数の関係:
表面利回り = 1 ÷ GRM × 100
GRM 10倍 → 表面利回り10%
GRM 12.5倍 → 表面利回り8%
GRM 15倍 → 表面利回り6.7%
GRM 20倍 → 表面利回り5%
GRM 25倍 → 表面利回り4%
→ GRMが低いほど利回りが高い
地域別のGRM目安
| 地域 |
GRM目安 |
特徴 |
| 東京都心 |
20〜30倍 |
低利回りだが資産価値安定 |
| 東京23区(周辺) |
15〜20倍 |
バランス型 |
| 地方都市 |
10〜15倍 |
利回り高いが空室リスク |
| 地方郊外 |
8〜12倍 |
高利回りだが流動性低い |
GRMによる物件比較
物件A:
価格: 8,000万円
年間賃料: 500万円
GRM = 16.0倍
物件B:
価格: 6,000万円
年間賃料: 450万円
GRM = 13.3倍
物件C:
価格: 1億円
年間賃料: 550万円
GRM = 18.2倍
→ GRMが最も低い物件Bが割安
→ ただし立地、築年数等も考慮が必要
GRMのメリット
| メリット |
説明 |
| 計算が簡単 |
2つの数値で算出可能 |
| 比較しやすい |
異なる物件を簡便に比較 |
| スクリーニング |
大量の物件から候補を絞り込み |
| 直感的 |
何年分の賃料で回収できるかがわかる |
GRMのデメリット
| デメリット |
説明 |
| 経費未考慮 |
運営費や修繕費を含まない |
| 空室未考慮 |
満室前提の計算 |
| 物件差を反映しない |
築年数、構造の違いを無視 |
| 地域差が大きい |
地域間で水準が大きく異なる |
GRMとNOI利回り(キャップレート)の違い
| 項目 |
GRM |
キャップレート |
| 分子 |
不動産価格 |
NOI |
| 分母 |
総賃料収入 |
不動産価格 |
| 経費 |
考慮しない |
考慮する |
| 精度 |
簡便 |
より正確 |
| 用途 |
スクリーニング |
本格的な分析 |
GRMの活用法
ステップ1: GRMでスクリーニング
同一エリアの物件をGRMで比較
→ 割安な候補を絞り込む
ステップ2: 詳細分析
GRMで絞った物件を
NOI利回り、DSCR等で詳細に分析
ステップ3: 投資判断
総合的に判断して投資決定
→ GRMは第一段階のフィルター
GRMに影響する要因
| 要因 |
GRMへの影響 |
| 立地 |
好立地→GRM高い(人気で価格高い) |
| 築年数 |
新しい→GRM高い |
| 金利環境 |
低金利→GRM高い(不動産価格上昇) |
| 賃料水準 |
賃料上昇余地→GRM低下の可能性 |
| 市場環境 |
好況→GRM上昇 |
GRMを使った適正価格の算出
適正価格の推定:
同エリアの平均GRM: 15倍
対象物件の年間賃料: 480万円
適正価格 = 480万円 × 15倍 = 7,200万円
売出価格が6,500万円なら:
→ 相場より割安の可能性
→ 詳細な調査を進める価値あり
売出価格が9,000万円なら:
→ 相場より割高
→ 特別な理由がなければ見送り
REIT分析でのGRM
| 指標 |
活用法 |
| REIT全体のGRM |
ポートフォリオ全体の割安度 |
| 個別物件のGRM |
保有物件の質を評価 |
| GRMの推移 |
不動産市場の過熱感を判断 |
| セクター比較 |
オフィス、住宅、商業等の比較 |
GRMの注意点
| 注意点 |
説明 |
| 経費率の違い |
物件により経費率が大きく異なる |
| 同一条件で比較 |
異なるエリア・タイプの比較は不適切 |
| 賃料の持続性 |
現在の賃料が継続する保証はない |
| 補助指標として使用 |
GRM単独での投資判断は危険 |
Welvioでの活用
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