このガイドでわかること
2026年 11月3日(火) に米国の中間選挙が行われます。下院は全435議席、上院は約3分の1の議席が改選され、トランプ政権後半2年間の政策の進め方を左右する選挙です。
このガイドでは以下のポイントを解説します。
- 中間選挙の基本と、現時点(2026年10月中旬)の情勢
- 中間選挙と株価の歴史的な関係
- シナリオA:共和党が上下両院を維持した場合 の政策と注目5銘柄
- シナリオB:民主党が下院(または上下両院)を奪還した場合 の政策と注目5銘柄
本ガイドは 2026年10月13日時点 の情報・予測にもとづいて作成した、選挙前のシナリオ分析です。選挙結果を踏まえた最新の情報については、選挙後にあらためて記事を掲載する予定です。
本ガイドは情報提供を目的としたもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。選挙結果の予想に基づく集中投資はリスクが高いため、投資判断はご自身の責任で行ってください。
中間選挙の基本と現在の情勢
中間選挙とは
中間選挙は、大統領の4年任期のちょうど中間に行われる連邦議会選挙です。大統領自身は改選されませんが、議会の多数派が入れ替わると、法案・予算・関税・調査権などの行方が大きく変わります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 投票日 | 2026年11月3日(火) |
| 下院 | 全435議席を改選(過半数は218議席) |
| 上院 | 全100議席のうち約3分の1を改選(過半数は51議席。50対50なら副大統領が決定票) |
| 現在の勢力 | 下院・上院ともに共和党が多数派(上院は53対47) |
予測市場・選挙モデルは「民主党の下院奪還」が優勢
2026年10月中旬時点の主な予測は以下のとおりです。
| 予測元 | 下院(民主党が多数派になる確率) | 上院(民主党が多数派になる確率) |
|---|---|---|
| Decision Desk HQ(10/12時点) | 76% | 56% |
| Poliwave(10/13時点) | 84% | 61% |
| Silver Bulletin(10/11時点) | 約93% | 下院に近い水準 |
予測市場Polymarketの「議会の勢力図」では、民主党が上下両院を獲得 が約62%、下院は民主党・上院は共和党(ねじれ) が約29%、共和党が上下両院を維持 は約10%となっています(10/12時点)。
つまり現時点では「トランプ(共和党)が負ける」シナリオのほうが市場のメインシナリオです。ただし上院はオハイオ・アイオワ・メイン・テキサスなどが接戦で、結果が読みにくい状況です。
中間選挙と株価の歴史的な関係
選挙前は軟調、選挙後は上昇しやすい
| 期間 | 過去の傾向 |
|---|---|
| 中間選挙前の12か月 | 平均リターン約2.9%と、長期平均(約8.9%)を下回りやすい(U.S. Bank) |
| 選挙直後の1か月 | 平均+0.5%程度で、上昇確率は約55%にとどまる |
| 選挙後の12か月 | 1874年以降の38回中32回でS&P500が上昇し、平均約+14% |
| 1950年以降の選挙後1年 | 平均+15.4%で、マイナスになった年はなし(Capital Group) |
選挙前は「結果がわからない不透明感」で上値が重くなりやすく、結果が確定すると不透明感が解消して株価が上がりやすい、というのが一般的な説明です。重要なのは、どちらの党が勝ったかと選挙後のリターンには明確な関係が見られない という点です。
「ねじれ議会」は悪くない?
JPMorganのデータでは、ねじれ議会になった場合のS&P500のその後2年間の平均リターンは 約21% で、単独政党が議会を支配した場合(約18%)を上回っています。大胆な政策変更が起きにくくなる分、市場にとっては「サプライズが少ない」安定要因と受け止められやすいためです。
一方、Morgan Stanleyは「選挙後12か月で最もパフォーマンスが良かったのは単独政党が議会を支配した局面」とも指摘しており、どの期間・指標で見るかによって結論は変わります。
シナリオ別:主な争点と政策の方向性
| 争点 | シナリオA:共和党が維持 | シナリオB:民主党が奪還 |
|---|---|---|
| 関税 | 大統領主導の関税政策が継続 | 関税権限を議会に戻す動き |
| 医療(Medicaid) | 2027年から始まる就労要件などの削減策が予定どおり進む | Medicaid削減の撤回を最優先課題に |
| ACA(オバマケア)補助金 | 2025年末に失効した上乗せ補助金は復活しにくい | 補助金の延長・復活を目指す |
| 薬価 | 政権と製薬会社の個別交渉が中心 | メディケア薬価交渉の拡大、製薬会社への調査 |
| 金融規制 | 規制緩和が継続 | 自己資本規制・消費者保護の強化が再浮上 |
| エネルギー | 化石燃料の増産・規制緩和を後押し | 化石燃料への監視強化、再エネ支援 |
| AI・データセンター | 規制は限定的 | 電気代上昇を背景にデータセンター規制論が強まる可能性 |
| 政権への調査 | 限定的 | 下院委員会の召喚権を使った調査が本格化 |
なお、民主党が下院だけを取った場合でも上院と大統領の拒否権があるため、民主党の法案がそのまま成立するわけではありません。ねじれの場合の実質的な影響は「共和党の新しい法案が通らなくなる」「調査・公聴会が増える」ことが中心になります。
シナリオA:共和党(トランプ陣営)が上下両院を維持した場合
想定される展開
予測市場では約10%と「サプライズ」に近いシナリオです。その分、実現すれば市場は 規制緩和・減税継続・防衛費拡大・化石燃料推進 といった現政権の路線継続を織り込み直すことになります。RBCは「やや株価にプラス」、Ameriprise はエネルギーと金融に追い風と分析しています。
注目5銘柄
| 銘柄名 | ティッカー | セクター | 恩恵を受ける理由 |
|---|---|---|---|
| Bank of America | BAC | 大手銀行 | 自己資本規制の緩和で株主還元余地が拡大 |
| Lockheed Martin | LMT | 防衛 | 防衛予算の拡大路線が継続 |
| Devon Energy | DVN | 石油・ガス開発 | 化石燃料の増産・規制緩和 |
| UnitedHealth Group | UNH | マネージドケア(医療保険) | 民間保険を軸とした医療政策が継続 |
| Equinix | EQIX | データセンターREIT | データセンター規制リスクが後退 |
Bank of America(BAC)|規制緩和の恩恵を最も受けやすい大手銀行
JPMorganは「共和党が上下両院を維持するサプライズが起きれば、Bank of America・Citigroup・Wells Fargoなど大手銀行株が上昇する」と分析しています。
共和党政権下では、大手銀行に求める自己資本規制(いわゆるバーゼルIII最終化)の緩和が進んでおり、議会も共和党が握れば規制強化への揺り戻しリスクがほぼなくなります。余剰資本が自社株買い・増配に回りやすくなる点が魅力です。
投資のポイント: 預金基盤が厚く金利動向の影響を受けやすい銘柄。選挙だけでなくFRBの利下げペースにも注目。
Lockheed Martin(LMT)|防衛予算拡大の本命
F-35戦闘機やミサイル防衛で知られる米国最大の防衛企業です。JPMorganは共和党勝利シナリオの銘柄としてLockheed MartinとL3Harrisを挙げています。
共和党は防衛予算の拡大に積極的で、ミサイル防衛構想「ゴールデン・ドーム」などの大型案件も進めやすくなります。なお、JPMorganはねじれ議会のシナリオでも防衛株を恩恵銘柄に挙げており、どちらに転んでも大崩れしにくい 点も特徴です。
投資のポイント: 政府向け売上が大半を占めるため、景気に左右されにくい。ただし大型プログラムの遅延・コスト超過が業績のリスク。
Devon Energy(DVN)|化石燃料推進の恩恵を受ける大手シェール
JPMorganが共和党勝利シナリオで名前を挙げた銘柄です。2026年5月に同業のCoterra Energyとの約580億ドル規模の合併を完了し、米国有数のシェールオイル・ガス生産会社になりました。
共和党が議会を維持すれば、連邦地の掘削許可・パイプライン建設などの規制緩和が続きます。一方で民主党が議会を握るとエネルギー企業への監視が強まるとMorgan Stanleyは指摘しており、選挙結果による明暗が分かれやすい セクターです。
投資のポイント: 業績は原油・天然ガス価格に大きく左右される。合併によるコスト削減の進捗も確認したい。
UnitedHealth Group(UNH)|マネージドケア最大手
米国最大の医療保険会社で、高齢者向け民間保険「メディケア・アドバンテージ」の最大手です。調査会社Strategasは共和党が議会を維持するシナリオでマネージドケア株が上昇しうると指摘しています。
共和党はメディケア・アドバンテージなど民間保険を活用した医療制度を支持する傾向があります。一方で民主党が勝てば、薬価・PBM(薬剤給付管理)改革や保険会社への調査が強まる可能性があり、子会社のPBM事業(Optum Rx)には逆風です。
投資のポイント: 2025年に医療費の急増で業績・株価が大きく崩れた経緯があり、業績回復の進み具合が選挙以上に重要。
Equinix(EQIX)|世界最大級のデータセンターREIT
世界各地でデータセンターを運営する不動産投資信託(REIT)です。Strategasはデータセンター関連の不動産株を共和党勝利シナリオの恩恵銘柄に挙げています。
2026年の選挙では、データセンターによる 電気代の上昇 が争点化しています。Morgan Stanleyは「民主党が上下両院を制するとデータセンター資産には最も不利」と分析しており、裏を返せば共和党の議会維持はこのリスクを後退させます。
投資のポイント: REITのため配当利回りがあり、AI需要の恩恵も受ける。金利上昇局面では株価が下がりやすい点に注意。
シナリオB:民主党が下院(または上下両院)を奪還した場合
想定される展開
予測市場・選挙モデルのメインシナリオです。民主党のジェフリーズ下院院内総務は、ACA補助金の延長、Medicaid削減の撤回、関税権限の議会への回帰 などを優先課題に掲げています。
- ねじれ(下院のみ民主党)の場合:大きな法律は通りにくく、政策は「現状維持」に近づきます。JPMorganはこれを「政策の下振れリスクが小さい」最も好ましいシナリオと評価し、ヘルスケア・防衛・一部の大型テック株を恩恵銘柄に挙げています。
- 民主党が上下両院を制した場合:医療予算の復活などが現実味を帯びます。JPMorganは病院・再エネ電力会社・環境サービスを恩恵セクターに挙げています。一方、金融・資本財には逆風になりやすいとされます。
注目5銘柄
| 銘柄名 | ティッカー | セクター | 恩恵を受ける理由 |
|---|---|---|---|
| HCA Healthcare | HCA | 病院運営 | Medicaid削減の撤回・保険加入者の維持 |
| Centene | CNC | 医療保険(Medicaid・ACA) | ACA補助金の復活で加入者・利益率が改善 |
| NextEra Energy | NEE | 電力(再エネ) | 再エネ支援策の維持・拡大 |
| Waste Management | WM | 環境サービス | 環境規制の強化・景気に左右されにくい事業 |
| Gilead Sciences | GILD | バイオ医薬品 | ねじれ議会で大きな医療制度改革が起きにくい |
HCA Healthcare(HCA)|全米最大級の病院チェーン
全米で多数の病院を運営する最大手の病院会社です。JPMorganは民主党が勝利するシナリオの恩恵セクターとして病院を挙げています。
2025年に成立した「One Big Beautiful Bill Act」により、Medicaidでは 2027年初めから就労要件 が全国で導入される予定で、無保険者の増加による病院の未収金増が懸念されています。民主党が議会を握り、こうした削減策の撤回・緩和が進めば、病院の収益にとって追い風になります。
投資のポイント: ねじれ議会では撤回法案は成立しにくいが、追加の医療費削減が止まるだけでも安心材料になる。
Centene(CNC)|ACA・Medicaid保険の最大手
ACA(オバマケア)の保険市場とMedicaid向け保険に強い保険会社です。ACAの上乗せ補助金は 2025年末に失効 し、保険料が上昇しました。2026年1月に下院は3年延長法案を可決しましたが、上院では成立していません。
民主党はACA補助金の延長を最優先課題に掲げており、実現すれば加入者の維持と利益率の改善につながります。実際、2025年11月に補助金延長の報道が出た際にはCentene株が1日で約8%上昇しました。
投資のポイント: 政策の影響を最も直接受ける「選挙感応度の高い」銘柄。期待が外れた場合の下落幅も大きい点に注意。
NextEra Energy(NEE)|米国最大の再エネ電力会社
風力・太陽光で世界最大級の発電事業者で、傘下にフロリダ州最大の電力会社を持ちます。JPMorganは民主党が上下両院を制した場合の恩恵セクターとして再エネ電力会社を挙げています。
共和党政権下では再エネ向け税額控除の段階的な縮小が決まっていますが、民主党が議会を握れば再エネへのさらなる逆風は止まりやすくなります。加えて原子力や送電網への投資でAI電力需要も取り込んでおり、選挙結果にかかわらず需要の伸びが見込める点も強みです。
投資のポイント: 規制電力事業による安定配当と、再エネ開発による成長の両方を持つ。金利動向に株価が左右されやすい。
Waste Management(WM)|北米最大の廃棄物処理会社
JPMorganが民主党が上下両院を制した場合の恩恵セクターに挙げた「環境サービス」の代表銘柄です。廃棄物の収集・処理・リサイクルに加え、埋立地ガスを使った再生可能天然ガス(RNG)事業も手がけています。
環境規制が強まると処理需要や価格決定力が高まりやすく、事業自体が景気に左右されにくいため、政策の不透明感が高い局面の守りの銘柄 としても機能します。
投資のポイント: 毎年の値上げで安定的に利益を伸ばす事業モデル。成長は緩やかなので短期の大幅上昇は期待しにくい。
Gilead Sciences(GILD)|HIV治療薬に強いバイオ大手
HIV治療薬で世界トップクラスのシェアを持つバイオ医薬品企業です。JPMorganはねじれ議会のシナリオで恩恵を受ける製薬株の代表としてGileadを挙げています。
ねじれ議会では薬価制度の大きな見直しも、医療予算の大幅削減も通りにくくなるため、製薬会社にとっては 政策リスクが小さい 状態になります。ただし民主党が上下両院を制した場合は、薬価交渉の拡大や製薬会社への調査が強まるため、シナリオBの中でも「ねじれ」向きの銘柄です。
投資のポイント: 年2回投与のHIV予防薬など新薬の普及が成長のカギ。選挙よりも新薬の売上動向の影響が大きい。
どちらのシナリオでも意識したいこと
選挙だけで銘柄を選ばない
Morningstar・Morgan Stanleyなど多くの金融機関は「選挙結果に合わせてポートフォリオを組み替えるべきではない」と指摘しています。2026年の株式市場を動かしている最大の要因は AI投資、企業業績、金利 であり、選挙はあくまで個別セクターに影響する「ミクロ要因」です。
シナリオ別の比較まとめ
| 観点 | シナリオA:共和党が維持 | シナリオB:民主党が奪還 |
|---|---|---|
| 予測市場での確率(10月中旬) | 約10% | 約90%(うち上下両院は約62%) |
| 追い風のセクター | 銀行・防衛・エネルギー・マネージドケア・データセンター | 病院・ACA保険・再エネ・環境サービス・製薬(ねじれ時) |
| 逆風のセクター | 病院・ACA保険・再エネ | 銀行・化石燃料・データセンター(上下両院時) |
| こんな人向け | 現政権の路線継続を見込む人、景気敏感株を好む人 | 予測どおりの結果を見込む人、ディフェンシブ株を好む人 |
実践的な考え方
- メインシナリオは織り込み済みの可能性がある:民主党の下院奪還は予測市場で高確率のため、すでに株価に一部反映されています。サプライズ(共和党の議会維持)が起きた場合のほうが株価の動きは大きくなりやすいです。
- 両シナリオに強い銘柄を軸にする:防衛株やAI関連の大型テック株は、どちらのシナリオでも大きく崩れにくいとされています。
- 選挙後の上昇を取り逃がさない:歴史的には選挙後の12か月は株価が上がりやすい傾向があります。結果を予想して一点張りするより、積立投資を続けることのほうが重要です。
Welvioでの活用
Welvioを使えば、保有している米国株を「選挙で追い風になる銘柄」「逆風になる銘柄」に分けて、ポートフォリオ全体の偏りを確認できます。
選挙結果が出た後も、セクター別の資産配分や評価額の推移をひと目で把握できるため、慌てて売買するのではなく、データにもとづいて冷静にリバランスを判断できます。