このガイドでわかること
企業へのサイバー攻撃と、それに伴う個人情報の流出が深刻化しています。2025年にはアサヒグループHDやアスクルがランサムウェア攻撃を受けて事業が長期停止し、東京商工リサーチの調査では、上場企業の個人情報漏えい・紛失事故の公表企業数が 158社と過去最多 、漏えい人数は 約3,064万人分(前年の約2倍) に達しました。
2026年もこの流れは止まらず、警察庁が公表した2026年上半期のランサムウェア被害は 123件と半期ベースで過去最多 を更新しています。さらに2026年10月1日には 「能動的サイバー防御」を定めたサイバー対処能力強化法 の本則が施行され、国・重要インフラ・一般企業のすべてでセキュリティ投資が「待ったなし」の状況です。
このガイドでは以下のポイントを解説します。
- サイバーセキュリティ関連株が注目される背景(2026年)
- 日本株の主要サイバーセキュリティ銘柄7社の比較
- 各社の強み・業績・投資のポイント
- 投資する際の注意点とリスク
サイバーセキュリティ関連株が注目される背景(2026年)
1. 個人情報流出・ランサムウェア被害の急増
| 項目 | データ | 出典 |
|---|---|---|
| 上場企業の個人情報漏えい・紛失事故(2025年) | 180件・158社(社数は過去最多) | 東京商工リサーチ |
| 漏えい・紛失した個人情報(2025年) | 約3,064万人分(前年比約93%増) | 東京商工リサーチ |
| うちウイルス感染・不正アクセスが原因 | 116件(全体の約64%) | 東京商工リサーチ |
| ランサムウェア被害(2026年上半期) | 123件(半期で過去最多) | 警察庁 |
事故の原因の6割以上が「ウイルス感染・不正アクセス」で、1件あたりの漏えい規模も他の原因より圧倒的に大きくなっています。アスクルはランサムウェア被害によるシステム復旧費用として 約52億円 を計上しており、「セキュリティ対策はコスト」から 「経営リスク対策」 へと認識が変わりつつあります。
2. 能動的サイバー防御法の施行(2026年10月〜)
2025年に成立したサイバー対処能力強化法(いわゆる能動的サイバー防御法)の本則が 2026年10月1日 に施行されました。電力・通信・金融などの基幹インフラ事業者には、重要な電子計算機の届出やインシデント報告が義務付けられ、官民連携の監視体制が段階的に整備されていきます。
国の安全保障としてサイバー防衛が位置付けられたことで、セキュリティは 「国策テーマ」 の性格を強めています。
3. 生成AIの普及で攻撃も防御も高度化
生成AIの普及により、攻撃側はフィッシングメールの作成やマルウェア開発を効率化しています。一方で防御側も AI による脅威検知・自動対応が進み、セキュリティ製品の高度化・単価上昇につながっています。
3つの需要ドライバー
| 要因 | 内容 | 恩恵を受ける銘柄 |
|---|---|---|
| 企業の被害急増 | ランサムウェア・情報漏えい対策の導入 | トレンドマイクロ、デジタルアーツ、HENNGE |
| 国策・安全保障 | 能動的サイバー防御、官公庁・防衛向け案件 | FFRIセキュリティ、NEC |
| 人材・体制不足 | 中堅中小企業のセキュリティ教育・コンサル需要 | GSX、サイバーセキュリティクラウド |
日本株のサイバーセキュリティ関連銘柄(7選)
銘柄一覧
| 銘柄名 | 証券コード | 市場 | 決算期 | 主力分野 |
|---|---|---|---|---|
| トレンドマイクロ | 4704 | プライム | 12月 | 総合セキュリティ(法人・個人) |
| デジタルアーツ | 2326 | プライム | 3月 | Web・メールフィルタリング |
| FFRIセキュリティ | 3692 | グロース | 3月 | エンドポイント対策・国家安全保障 |
| HENNGE | 4475 | グロース | 9月 | クラウドセキュリティSaaS |
| グローバルセキュリティエキスパート(GSX) | 4417 | グロース | 3月 | セキュリティ教育・コンサル |
| サイバーセキュリティクラウド | 4493 | グロース | 12月 | WAF(Webアプリ防御) |
| NEC | 6701 | プライム | 3月 | 政府・重要インフラ向けセキュリティ |
トレンドマイクロ(4704)|国内最大のセキュリティ専業企業
「ウイルスバスター」で知られる世界的セキュリティベンダー
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な製品 | ウイルスバスター(個人向け)、Trend Vision One(法人向け統合セキュリティ) |
| 2026年12月期 会社予想 | 売上高 3,015億円(+9.2%)、営業利益 444億円(-23.2%) |
| 株主還元方針 | 配当性向70%目標+自社株買いで実質総還元性向100% |
トレンドマイクロは売上の大半を海外で稼ぐグローバル企業で、法人向けの統合セキュリティプラットフォーム 「Trend Vision One」 を成長の柱としています。2026年12月期は売上高が約9%増と堅調な一方、AI関連のクラウド費用(AIトークンコストなど)やブランド投資の増加で、2026年8月に営業利益予想を564億円から444億円へ 下方修正 しました。
2025年には複数の投資ファンドによる買収検討が報じられ株価が急騰しましたが、現時点で上場は維持されています。
投資のポイント: 国内セキュリティ株で最大規模かつ、利益のほぼ全額を株主に還元する方針が特徴。配当重視の投資家にも向いています。ただしAI投資による利益率低下が続くかどうかが今後の焦点です。
デジタルアーツ(2326)|Web・メール対策で高収益
「i-FILTER」「m-FILTER」で官公庁・教育市場に強み
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な製品 | i-FILTER(Webフィルタリング)、m-FILTER(メールセキュリティ)、Z-FILTER |
| 2027年3月期 会社予想 | 売上高 120億円(+10.8%)、営業利益 54億円(+12.7%) |
| 注目の動き | NECとの協業で2026〜2030年に約88億円の受注目標 |
デジタルアーツは国産のWeb・メールセキュリティ製品を手がける企業です。官公庁・自治体や、GIGAスクール構想を通じた教育市場で高いシェアを持ち、 営業利益率40%台 という高収益体質が特徴です。
2027年3月期第1四半期は売上高が前年同期比19.4%増、営業利益が30.2%増と好調なスタートを切りました。一方で、2026年5月には企業向け市場の立ち上がりの遅れなどから中期計画の利益目標を引き下げ、株価が急落した経緯もあります。
投資のポイント: 公共・教育市場の安定基盤と高い利益率が魅力。企業向け市場やクラウド製品(Z-FILTER)の伸びが再成長の鍵となります。
FFRIセキュリティ(3692)|国産技術で国家安全保障を担う
純国産の研究開発型セキュリティ企業
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な製品 | FFRI yarai(未知のマルウェアを検知するエンドポイント対策) |
| 2027年3月期 会社予想 | 売上高 51.35億円(+18.1%)、営業利益 14.52億円(+6.5%) |
| 注目の動き | 官公庁・防衛産業向け「ナショナルセキュリティ・サービス」の拡大 |
FFRIセキュリティは、パターンファイルに頼らず振る舞いから未知の攻撃を検知する 「FFRI yarai」 を開発する純国産のセキュリティ企業です。近年は官公庁・防衛産業向けの調査・研究・分析・教育を行う ナショナルセキュリティ・サービス が急成長しており、能動的サイバー防御の本格化で「国策銘柄」として注目されています。
ただし、2027年3月期第1四半期はエンジニア増員などのコスト増で営業利益が前年同期比30%減となっており、投資負担が先行しています。
投資のポイント: 国産技術・安全保障というテーマ性が強く、ニュースで株価が大きく動きやすい銘柄。時価総額が小さく値動きが激しいため、分散投資の一部として組み入れるのが無難です。
HENNGE(4475)|クラウド時代のアクセス管理SaaS
Microsoft 365・Google Workspaceの「入口」を守る
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な製品 | HENNGE One(SSO・アクセス制御・メールセキュリティ・DLP) |
| 2026年9月期 会社予想 | 売上高 128.34億円(+17.5%)、営業利益 20.57億円(+14.7%) |
| ARR(年間経常収益) | 125.19億円(2026年6月末時点) |
HENNGEは、クラウドサービスへの安全なログイン(シングルサインオン)やアクセス制御、メール誤送信対策などをまとめて提供する 「HENNGE One」 を展開しています。サブスクリプション型のストック収益で、解約率が低く業績の安定性が高いのが特徴です。
投資のポイント: 企業のクラウド移行とゼロトラスト化の流れに乗るSaaS銘柄。ARR(年間経常収益)が毎年2桁成長を続けており、成長の「見えやすさ」が魅力です。
グローバルセキュリティエキスパート(4417)|中堅中小企業のセキュリティ教育
人材不足を「教育」で解決する独自モデル
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主なサービス | 標的型メール訓練、セキュリティ教育(セキュリスト)、コンサル、ソリューション |
| 2026年3月期 実績 | 売上高 110.22億円(+25.2%)、営業利益 22.38億円(+38.6%)、過去最高 |
| 2027年3月期 会社予想 | 売上高 137.78億円(+25%)、純利益 19.98億円(+34.5%) |
GSXは中堅・中小企業やIT企業・SIerを主な顧客とし、標的型メール訓練や従業員教育、セキュリティエンジニア育成講座などを提供しています。大企業に比べて対策が遅れがちな中堅中小企業は、取引先経由で攻撃を受ける 「サプライチェーン攻撃」 の入口にもなりやすく、対策需要が拡大しています。
投資のポイント: 売上高25%前後の高成長を継続中。「人材不足」というセキュリティ業界最大の課題に正面から取り組むビジネスモデルが強みです。
サイバーセキュリティクラウド(4493)|WAFで国内トップクラス
Webサイト・Webアプリへの攻撃を防御
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な製品 | 攻撃遮断くん、WafCharm(AWS WAF等の自動運用)、AWS WAF Managed Rules |
| 2026年12月期 会社予想 | 売上高 60億円、営業利益 12億円 |
| 注目の動き | AI普及による通信量増でWafCharmの従量課金売上が増加 |
サイバーセキュリティクラウドは、ECサイトや会員サイトなどWebアプリケーションへの攻撃を防ぐ WAF(Web Application Firewall) を主力とする企業です。個人情報流出の多くはWebサイト経由で起きるため、WAFは情報漏えい対策の基本といえます。
2026年12月期第1四半期は売上高が前年同期比17.5%増、営業利益が50.6%増と好調で、価格改定によるARRの押し上げも見込まれています。
投資のポイント: ストック型収益で利益率が改善中の小型成長株。AWSなどクラウド基盤の普及とともに市場が広がる点が魅力です。
NEC(6701)|国家・重要インフラのサイバー防衛
「.JPを守る」を掲げる大型IT企業
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主なサービス | 政府・重要インフラ向けセキュリティ、SOC(監視)サービス、防衛情報システム |
| 注目の動き | 2025年10月に「Cyber Intelligence & Operation Center」を本格稼働 |
| 防衛以外の主力事業 | 官公庁・企業向けITサービス、社会インフラ、通信 |
NECは政府機関・自衛隊・重要インフラ事業者向けのセキュリティを担う大手IT企業です。2025年12月にはサイバーセキュリティ戦略を更新し、 「.JP(日本のサイバー空間)を守る」 をミッションに掲げました。能動的サイバー防御の実現には官民の大規模なシステム整備が必要で、その中核を担う企業の一つと見られています。デジタルアーツとの協業など、専業ベンダーとの連携も進めています。
投資のポイント: セキュリティ専業ではないものの、国策としてのサイバー防衛の恩恵を受けやすい大型株。値動きが比較的穏やかで、テーマ投資の「土台」として組み入れやすい銘柄です。
銘柄比較表
| 銘柄 | コード | 規模 | 収益モデル | 主な顧客 | 投資タイプ |
|---|---|---|---|---|---|
| トレンドマイクロ | 4704 | 大型 | サブスク中心 | 世界の法人・個人 | 高還元・安定 |
| デジタルアーツ | 2326 | 中型 | ライセンス+クラウド | 官公庁・教育・企業 | 高収益 |
| FFRIセキュリティ | 3692 | 小型 | 製品+受託 | 官公庁・防衛産業 | 国策テーマ |
| HENNGE | 4475 | 小型 | SaaS(ストック型) | 中堅〜大企業 | 安定成長 |
| GSX | 4417 | 小型 | 教育・コンサル | 中堅中小企業・SIer | 高成長 |
| サイバーセキュリティクラウド | 4493 | 小型 | SaaS(ストック型) | Webサービス事業者 | 高成長 |
| NEC | 6701 | 超大型 | SI・サービス | 政府・重要インフラ | 安定・国策 |
投資する際のポイント
サイバーセキュリティ株投資の3つのアプローチ
| アプローチ | 説明 | 該当銘柄 |
|---|---|---|
| 製品・SaaS戦略 | ストック型収益で継続的に成長する企業を選ぶ | HENNGE、サイバーセキュリティクラウド、トレンドマイクロ |
| 国策・安全保障戦略 | 能動的サイバー防御や防衛関連の受注を狙う | FFRIセキュリティ、NEC |
| 人材・サービス戦略 | 人材不足を背景に伸びる教育・コンサルに注目 | GSX、デジタルアーツ |
注意すべきリスク
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バリュエーションの高さ :小型の成長株はPER(株価収益率)が高く、成長が鈍化すると株価が大きく下落しやすい傾向があります。デジタルアーツの計画下振れ時のように、決算ひとつでストップ安になることもあります
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テーマ株特有の値動き :大規模なサイバー攻撃のニュースで短期的に急騰し、その後反落するパターンが繰り返されます。ニュースに飛びついた高値掴みに注意しましょう
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競争の激化 :海外の大手セキュリティベンダー(CrowdStrike、Palo Alto Networks など)や、Microsoft の標準機能との競合が強まっています
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人件費・AIコストの増加 :セキュリティ人材の採用競争やAIのクラウド費用増加が利益を圧迫することがあります(トレンドマイクロ、FFRIで顕在化)
-
流動性リスク :グロース市場の小型株は売買代金が少なく、思った価格で売買できない場合があります
こんな人におすすめ
| 投資スタイル | おすすめ銘柄 |
|---|---|
| 配当・株主還元を重視 | トレンドマイクロ |
| 安定した成長を重視 | HENNGE、NEC |
| 高成長の小型株に挑戦したい | GSX、サイバーセキュリティクラウド |
| 国策テーマに乗りたい | FFRIセキュリティ、NEC |
| 高い利益率の企業が好き | デジタルアーツ |
Welvioでの活用
Welvioを使えば、サイバーセキュリティ関連株をポートフォリオに加えた際に、テーマ株への集中度や資産全体のバランスをひと目で確認できます。
セキュリティ関連の小型株はニュースで大きく値動きしやすいため、ポートフォリオに占める比率を決めておくことが大切です。Welvioの資産配分分析機能を活用して、成長株と安定株のバランスを定期的にチェックしましょう。