このガイドでわかること
日本の「防衛費倍増計画」や NATO 諸国の軍備増強、ウクライナ・中東情勢など、地政学リスクが高まる 2026 年において、防衛・防衛産業関連株への注目が急速に高まっています。
このガイドでは以下のポイントを解説します。
- 防衛関連株が注目される理由(2026年)
- 日本の主要防衛企業5社の比較
- 米国の主要防衛企業5社の比較
- 投資する際の注意点とリスク
防衛関連株が注目される背景(2026年)
日本:防衛費倍増計画が本格化
日本政府は2022年12月に策定した「防衛力整備計画」に基づき、防衛費を2027年度までに GDP 比 2% 水準へ引き上げる方針を掲げています。2025年度の防衛費は約8.7兆円と、2022年度比で約1.6倍規模となり、防衛企業への発注が大幅に増加しています。
世界:NATO加盟国の軍備拡大
ロシアのウクライナ侵攻を機に、NATO加盟国の多くが GDP 比2%以上の防衛費目標を達成・上回りつつあります。欧州各国の軍備増強は米国の防衛企業にとっても大きな追い風です。
3つの需要ドライバー
| 要因 | 内容 | 恩恵を受ける銘柄 |
|---|---|---|
| 日本の防衛費倍増 | 護衛艦・潜水艦・戦闘機の調達増加 | 三菱重工、川崎重工、IHI |
| 欧州の軍備拡大 | 防空システム・弾薬の需要急増 | RTX、Northrop Grumman |
| AI・無人化の進展 | ドローン・自律型兵器システムへの投資 | Palantir、三菱電機 |
日本の防衛関連銘柄(5選)
銘柄一覧
| 銘柄名 | 証券コード | 主な防衛製品 | 防衛事業の特徴 |
|---|---|---|---|
| 三菱重工業 | 7011 | 次期戦闘機、護衛艦、ミサイル | 防衛全領域をカバー |
| 川崎重工業 | 7012 | 潜水艦、P-1哨戒機、C-2輸送機 | 海自・空自向け主力 |
| IHI | 7013 | 航空エンジン(次期戦闘機用XF9) | エンジン開発の中核 |
| 三菱電機 | 6503 | レーダー、電子戦システム | 防衛電子機器 |
| NEC | 6701 | 防衛情報システム、通信 | 防衛DX・AI活用 |
三菱重工業(7011)|日本の防衛産業の旗艦
防衛全領域をカバーする日本最大の防衛企業
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な防衛製品 | 次期戦闘機(GCAP)、12式地対艦誘導弾、護衛艦 |
| 防衛以外の主力事業 | エナジー(原子力・火力発電)、物流・冷熱・ドライブ |
| 注目の動き | 英国・イタリアと共同で次期戦闘機(GCAP)を開発 |
三菱重工業は航空機・艦船・ミサイルなど防衛のほぼ全領域を手がける日本最大の防衛企業です。次期戦闘機( GCAP、英国・イタリアと共同開発)では中核企業として参加しており、日本の防衛費増額の最大の受益企業のひとつです。
12式地対艦誘導弾の能力向上型(スタンド・オフ・ミサイル)の開発・量産も手がけており、ミサイル防衛でも重要な役割を担っています。
投資のポイント: 防衛費増額の恩恵を最も広く受ける銘柄。ただし、売上全体に占める防衛比率は約15〜25% 程度であり、エネルギー事業や産業機械など他事業の動向も株価に影響します。
川崎重工業(7012)|潜水艦・哨戒機のスペシャリスト
海上・航空防衛のキープレイヤー
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な防衛製品 | 潜水艦(共同建造)、P-1哨戒機、C-2輸送機 |
| 防衛以外の主力事業 | モーターサイクル、鉄道車両、水素エネルギー |
| 注目の動き | 防衛費増額に伴う潜水艦追加建造の恩恵期待 |
川崎重工業は海上自衛隊向けの潜水艦や P-1哨戒機、C-2輸送機などを手がける防衛企業です。日本の増大する海洋安全保障ニーズに対応して潜水艦の追加建造が見込まれており、長期的な受注拡大が期待されます。
投資のポイント: 海上防衛力の強化に伴う受注増が期待される。ただし、2024年に防衛省関係者への接待問題が発覚しており、コンプライアンスリスクには注意が必要です。モーターサイクルや水素など非防衛事業も業績に大きく影響します。
IHI(7013)|次期戦闘機エンジンの担い手
航空エンジン開発・整備で唯一無二の技術
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な防衛製品 | XF9-1エンジン(次期戦闘機用)、F-15J整備 |
| 防衛以外の主力事業 | 民間航空エンジン(GE/CFM製エンジン整備等)、宇宙・産業機器 |
| 注目の動き | GCAPに採用が見込まれる国産エンジンの開発 |
IHIは次期戦闘機(GCAP)用に開発中の国産エンジン 「XF9」 の主開発企業です。推力15トン以上を目標とするこのエンジンは、F-15Jの整備で培った技術を活かして開発されています。
防衛事業はIHI全体の売上の約1〜2割程度ですが、次期戦闘機の実用化に向けてエンジン関連の受注が増加する見込みです。
投資のポイント: 次期戦闘機の国産エンジン開発という唯一無二のポジション。ただし、本格的な量産・売上貢献は2030年代以降であり、長期投資の視点が必要です。
三菱電機(6503)|防衛電子機器の要
レーダー・電子戦・宇宙システムの総合力
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な防衛製品 | フェーズドアレイレーダー、電子戦システム、人工衛星 |
| 防衛以外の主力事業 | FA(工場自動化)、家電・住宅設備、昇降機 |
| 注目の動き | ミサイル防衛・レーダーシステムの需要増大 |
三菱電機は防衛電子機器分野でトップレベルの技術力を持ちます。イージス艦搭載のフェーズドアレイレーダーや電子戦システムなどを手がけており、日本の防衛網の「目」として重要な役割を担っています。
投資のポイント: 防衛電子機器の高い技術力が強み。FA(工場自動化)や家電など非防衛事業が売上の大部分を占めるため、防衛費増額の直接的な受益度は三菱重工ほど高くない点に注意。
NEC(6701)|防衛DX・AIの担い手
自衛隊の情報インフラを支えるIT・通信企業
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な防衛製品 | 防衛情報システム、通信システム、サイバー防衛 |
| 防衛以外の主力事業 | 社会インフラ、エンタープライズIT |
| 注目の動き | 自衛隊のデジタル化・AI活用推進 |
NECは自衛隊の C4I(指揮・統制・通信・情報)システムや通信インフラを担う企業です。防衛省のデジタル化推進やサイバー防衛強化に伴い、IT・通信分野での防衛需要が増加しています。
投資のポイント: 防衛DXの受益銘柄。サイバーセキュリティやAIを活用した防衛システムへの需要拡大が長期的な成長ドライバーとなります。
米国の防衛関連銘柄(5選)
銘柄一覧
| 銘柄名 | ティッカー | 主な防衛製品 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Lockheed Martin | LMT | F-35、HIMARS、PAC-3 | 世界最大の防衛企業 |
| RTX | RTX | Patriotミサイル、AMRAAM、F135エンジン | ミサイル・エンジンの巨人 |
| Northrop Grumman | NOC | B-21 Raider、LGM-35A Sentinel | ステルス・次世代抑止力 |
| General Dynamics | GD | バージニア級潜水艦、M1エイブラムス | 艦艇・陸上兵器 |
| Palantir | PLTR | AI分析プラットフォーム(Maven) | 防衛AIのリーダー |
Lockheed Martin(LMT)|世界最大の防衛企業
F-35を中心にグローバルで圧倒的な存在感
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な製品 | F-35戦闘機、HIMARS多連装ロケット砲、PAC-3ミサイル |
| 売上規模 | 約700億ドル(2024年) |
| 注目の動き | F-35の日本・欧州向け受注が継続 |
Lockheed Martinは売上高・時価総額ともに世界最大の防衛企業です。 F-35戦闘機 は米国・日本・英国・欧州各国など世界中で採用されており、長期にわたる安定した製造・サポート収益をもたらします。ウクライナ戦争で需要が急増した HIMARS(多連装ロケット砲) や PAC-3ミサイル の生産増も追い風です。
投資のポイント: F-35の長期的なサポート・アップグレード需要が安定収益の源泉。防衛費増額の恩恵を直接受ける一方、米国政府との価格交渉リスクも存在します。
RTX(RTX)|ミサイルと航空エンジンの巨人
Patriot防空システムで世界から引き合い殺到
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な製品 | Patriot防空システム、AMRAAM(AIM-120)、F135エンジン |
| 売上規模 | 約800億ドル(2024年) |
| 注目の動き | Patriotの需要がウクライナ・NATO諸国で急増 |
RTXはRaytheon(ミサイル・防空システム)、Pratt & Whitney(航空エンジン)、Collins Aerospace(航空電子機器)の3事業を持つ複合防衛企業です。ウクライナや中東情勢を受けて Patriot防空システム と AMRAAM空対空ミサイル の需要が急増。F-35に搭載される F135エンジン も生産が増加しています。
投資のポイント: 複数の防衛セグメントに分散されており安定感が高い。民間航空(Pratt & Whitney、Collins Aerospace)も手がけるため、防衛と民間の両輪で成長を見込めます。
Northrop Grumman(NOC)|ステルスと次世代抑止力の担い手
B-21 Raider量産と次世代ICBMが長期収益源
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な製品 | B-21 Raider爆撃機、LGM-35A Sentinel(次世代ICBM)、無人機 |
| 売上規模 | 約410億ドル(2024年) |
| 注目の動き | 次世代ステルス爆撃機B-21 Raiderの量産開始 |
Northrop Grummanは米空軍向け次世代ステルス爆撃機 B-21 Raider の独占的な製造企業です。また、老朽化したMinuteman III(ICBM)を置き換える次世代大陸間弾道ミサイル LGM-35A Sentinel の開発・量産も担っており、長期の安定受注が見込まれます。
投資のポイント: 政治的に削減しにくいステルス機・核抑止プログラムを担うため、予算削減の影響を受けにくい。ただし、LMTやRTXに比べて民間事業が少なく、政府予算への依存度が高い点に注意。
General Dynamics(GD)|艦艇・陸上兵器のスペシャリスト
原子力潜水艦と戦車で独占的なポジション
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な製品 | バージニア級・コロンビア級原子力潜水艦、M1エイブラムス戦車 |
| 売上規模 | 約480億ドル(2024年) |
| 特徴 | Gulfstreamビジネスジェットも手がける |
General DynamicsはElectric Boat部門で米海軍向け バージニア級原子力潜水艦 と次世代の コロンビア級弾道ミサイル潜水艦 を建造する主要企業です。AUKUSの枠組みでオーストラリアへの原子力潜水艦技術供与でも重要な役割を担っています。高級ビジネスジェット Gulfstream も手がけており、防衛と民間の二本柱を持ちます。
投資のポイント: 原子力潜水艦の製造は参入障壁が極めて高く、実質的な独占企業。AUKUSの長期受注も期待できる。ただし、造船所の生産能力制約が受注拡大のボトルネックになる可能性もあります。
Palantir(PLTR)|防衛AIの新世代リーダー
AIプラットフォームで軍のデジタル作戦を支援
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な製品 | Maven Smart System、TITAN、AIP(AI Platform) |
| 売上規模 | 約28億ドル(2024年) |
| 注目の動き | 米国防総省・政府機関向けAI契約が急増 |
Palantirは AI を活用したデータ分析・意思決定プラットフォームを防衛・政府機関に提供する企業です。米陸軍向けの Maven Smart System や戦術情報分析システム TITAN を通じ、「現代の戦場における AI」のリーダー的存在となっています。
2024〜2025年にかけて政府向けAI案件が急増し、売上成長率は30%超を記録しました。
投資のポイント: 防衛DX・AI活用の最大の受益企業のひとつ。ただし、PERが非常に高く、成長への期待が株価に織り込まれている点に注意。民間事業(商業部門)の成長も今後の焦点です。
日米銘柄比較表
| 銘柄 | コード/ティッカー | 国 | 主力製品 | 規模 | 投資タイプ |
|---|---|---|---|---|---|
| 三菱重工業 | 7011 | 日本 | 戦闘機・護衛艦・ミサイル | 大型 | 安定成長 |
| 川崎重工業 | 7012 | 日本 | 潜水艦・哨戒機・輸送機 | 大型 | バリュー |
| IHI | 7013 | 日本 | 航空エンジン | 中型 | 長期成長 |
| 三菱電機 | 6503 | 日本 | レーダー・電子戦 | 大型 | バリュー |
| NEC | 6701 | 日本 | 防衛情報システム | 大型 | 安定成長 |
| Lockheed Martin | LMT | 米国 | F-35・HIMARS | 超大型 | 安定成長 |
| RTX | RTX | 米国 | Patriot・F135エンジン | 超大型 | 安定成長 |
| Northrop Grumman | NOC | 米国 | B-21・次世代ICBM | 大型 | ディフェンシブ |
| General Dynamics | GD | 米国 | 原子力潜水艦・M1戦車 | 大型 | 安定成長 |
| Palantir | PLTR | 米国 | 防衛AIプラットフォーム | 中型 | ハイグロース |
投資する際のポイント
防衛関連株投資の3つのアプローチ
| アプローチ | 説明 | 該当銘柄 |
|---|---|---|
| ハードウェア戦略 | 戦闘機・艦船・ミサイルなど物理的な兵器を製造 | 三菱重工、LMT、GD |
| 電子・情報戦略 | レーダー・通信・サイバー・AIシステムを提供 | 三菱電機、NEC、Palantir |
| エンジン・コンポーネント戦略 | 防衛製品の部品・エンジンを供給 | IHI、RTX |
注意すべきリスク
-
政府予算リスク :防衛関連企業の売上は政府の防衛予算に大きく依存します。政権交代や財政緊縮で防衛費が削減されると業績に直撃します
-
契約コスト超過リスク :大型防衛プロジェクトは開発費の超過(コストオーバーラン)が頻繁に発生し、企業利益を圧迫することがあります
-
倫理・ESGリスク :環境・社会・ガバナンス(ESG)を重視する機関投資家は防衛株を投資対象から除外するケースがあります
-
地政学リスクの急変 :紛争の終結や和平交渉は防衛需要の急減をもたらす可能性があります。現在の需要増が永続するとは限りません
-
為替リスク :米国株投資の場合、円高局面では為替差損が発生します。日本の防衛企業でも、米国製品の輸入コストが円安で上昇することがあります
こんな人におすすめ
| 投資スタイル | おすすめ銘柄 |
|---|---|
| 安定した配当を重視 | Lockheed Martin、General Dynamics、三菱重工業 |
| 日本の防衛費倍増に乗りたい | 三菱重工業、川崎重工業、IHI |
| AI・テクノロジーに賭けたい | Palantir、NEC |
| ディフェンシブな投資がしたい | Northrop Grumman、三菱電機 |
| 分散投資したい | 日米の複数銘柄を組み合わせ |
Welvioでの活用
Welvioを使えば、防衛関連銘柄をポートフォリオに組み込んだ際のセクター比率やリスクバランスを確認できます。
防衛株は政府予算や地政学情勢に左右されやすく、市場全体との相関が低いアセットです。Welvioの資産配分分析機能を活用して、防衛銘柄がポートフォリオ全体のリスク分散に貢献しているかを定期的にチェックしましょう。