このガイドでわかること
日本政府が10年間で 1兆円規模 の「宇宙戦略基金」を設置し、宇宙ビジネスを国策として推進しています。2023年〜2025年にかけて複数の宇宙ベンチャーが東証に上場し、H3ロケットの連続打上げ成功など、日本の宇宙産業はいま大きな転換点を迎えています。
このガイドでは以下のポイントを解説します。
- 宇宙ビジネスの市場規模と成長性
- 注目の日本上場銘柄6社の比較
- 各企業の強みとリスク
- 投資する際の注意点
宇宙ビジネスの市場規模
グローバル市場
世界の宇宙産業の市場規模は2023年時点で約 6,300億ドル(約100兆円) に達しています。2030年には 1兆1,600億ドル(約185兆円) 、さらに2035年には 1兆7,900億ドル(約286兆円) へと成長すると予測されています。
日本の宇宙産業
日本の宇宙基本計画では、2020年に4兆円だった市場規模を 2030年早期に8兆円 に拡大する目標を掲げています。政府は「宇宙戦略基金」としてJAXAに10年間で1兆円規模の資金を投じ、民間企業・大学等による先端技術開発や商業化を支援しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 世界市場規模(2023年) | 約6,300億ドル(約100兆円) |
| 世界市場規模(2030年予測) | 約1兆1,600億ドル(約185兆円) |
| 日本の市場規模目標(2030年) | 8兆円 |
| 宇宙戦略基金 | 10年間で1兆円規模 |
宇宙ビジネスの主要領域
| 領域 | 概要 | 代表的な事業 |
|---|---|---|
| ロケット打上げ | 衛星や物資を宇宙に輸送 | H3ロケット、小型ロケット |
| 人工衛星 | 地球観測・通信・測位 | SAR衛星、通信衛星 |
| 月面・深宇宙探査 | 月面への着陸・資源探査 | 月面ランダー、ローバー |
| 軌道上サービス | デブリ除去・衛星点検 | スペースデブリ除去 |
| 宇宙旅行 | 民間人の宇宙体験 | サブオービタル飛行 |
注目の宇宙関連銘柄
銘柄一覧
| 銘柄名 | コード | 主な事業領域 | 宇宙ビジネスでの役割 |
|---|---|---|---|
| 三菱重工業 | 7011 | ロケット・防衛宇宙 | H3ロケット打上げサービス |
| IHI | 7013 | ロケットエンジン・宇宙機器 | ロケット基幹部品の製造 |
| ispace | 9348 | 月面探査 | 民間月面着陸・輸送サービス |
| アストロスケールHD | 186A | 軌道上サービス | スペースデブリ除去 |
| QPS研究所 | 5595 | 小型SAR衛星 | 高精度地球観測データ提供 |
| Synspective | 290A | SAR衛星・ソリューション | 衛星データ分析サービス |
各銘柄の詳細
ロケット・宇宙インフラ ── 宇宙ビジネスの基盤
宇宙ビジネスのすべての起点は「宇宙に物を運ぶ」ことです。ロケット打上げや宇宙機器の製造は、衛星ビジネスや月面探査など他の領域を支える 基盤インフラ です。
三菱重工業(7011)|H3ロケットの打上げサービス
日本の宇宙輸送を一手に担う国内最大の宇宙企業
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 決算期 | 3月期 |
| 事業内容 | エナジー、航空・防衛・宇宙、プラント・インフラ |
| 宇宙事業 | H3ロケット打上げサービス、宇宙ステーション関連機器 |
| 強み | 日本唯一の基幹ロケット打上げ事業者。国の宇宙輸送の中核 |
2026年3月期Q3累計の売上収益は3兆3,269億円(前年同期比+9.2%)、事業利益は3,012億円(同+25.5%)と大幅な増収増益を達成。通期は売上収益4兆8,000億円(前期比+10.1%)、事業利益4,100億円(同+15.5%)と上方修正されています。特に 航空・防衛・宇宙セグメント の利益は前年同期比+50.9%と牽引役です。
H3ロケットは 5機連続の打上げ成功 を達成し、信頼性を確立しつつあります。H2Aロケットは2025年6月の50号機をもって退役し、今後はH3に完全移行します。欧州の大手通信事業者Eutelsatとの打上げ契約も締結し、海外商業打上げ市場への参入も進めています。
投資のポイント: 宇宙事業は全社売上の一部だが、防衛費増額の恩恵と合わせて航空・防衛・宇宙セグメントの成長が続く。大型株としての安定感がある。
IHI(7013)|ロケットエンジンの心臓部
H3ロケットの固体ロケットブースターやターボポンプを製造する技術集団
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 決算期 | 3月期 |
| 事業内容 | 航空エンジン、宇宙機器、防衛機器、産業機械 |
| 宇宙事業 | ロケット用固体ブースター(SRB-3)、ターボポンプ、イプシロンSロケット |
| 強み | 次世代ロケットエンジン技術(LNG推進、デトネーションエンジン)の研究で世界をリード |
2026年3月期Q3累計の最終利益は850億円(前年同期比+10.7%)で、通期の最終利益予想1,250億円に対する進捗率は68.0%(5年平均56.9%を上回る)と上振れ余地があります。通期は売上収益1兆6,500億円、営業利益1,500億円を見込んでいます。
子会社 IHIエアロスペース はイプシロンSロケットの開発や、 スペースワン (キヤノン電子・IHIエアロスペース等の共同出資)の小型ロケット「カイロス」の技術にも関わっています。LNG(液化天然ガス)を燃料とするロケットエンジンや、世界に先駆けた デトネーションエンジン の研究も注目です。
投資のポイント: 宇宙事業は全社の一部だが、航空エンジン事業と合わせた技術力が強み。防衛費増額の恩恵も受ける。三菱重工と並ぶ宇宙インフラ銘柄。
月面探査 ── 民間企業が月を目指す時代
月面への物資輸送や探査は、NASAの「アルテミス計画」をはじめ世界的に注目を集める分野です。日本からも民間企業が月面着陸に挑戦しています。
ispace(9348)|民間月面着陸の先駆者
世界初の民間月面着陸を目指す日本発の宇宙ベンチャー
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 決算期 | 3月期 |
| 事業内容 | 月面探査・輸送サービス(ペイロードサービス) |
| 宇宙事業 | 月面ランダー「RESILIENCE」の開発・運用、月面データサービス |
| 強み | NASAのCLPS(商業月面輸送サービス)に選定。米国市場にも展開 |
2025年3月期の売上高は47億4,300万円(前期比+101%)と大幅増収。2026年3月期は売上高62億円(同+30.7%)を見込みますが、営業損失は115億円と赤字が続いています。
ミッション2では月面着陸船「RESILIENCE」を2025年1月にSpaceXで打上げ、2025年5月時点で月周回軌道への到達(Success 7)まで順調に進行しました。ミッション3のペイロード契約総額は 8,600万ドル(約130億円) に拡大しています。
投資のポイント: 月面着陸の成否が株価を大きく左右するハイリスク・ハイリターン銘柄。成功すれば民間月面輸送市場のリーダーとしての地位を確立する可能性がある。
軌道上サービス ── 宇宙の「掃除屋」
増え続ける宇宙ゴミ(スペースデブリ)は国際的な課題です。デブリの除去や衛星の寿命延長といった軌道上サービスは、今後の宇宙利用に不可欠なインフラとして注目されています。
アストロスケールHD(186A)|スペースデブリ除去のパイオニア
軌道上サービスで世界をリードする日本発の宇宙ベンチャー
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 決算期 | 4月期 |
| 事業内容 | スペースデブリ除去、衛星寿命延長サービス |
| 宇宙事業 | 運用終了衛星のデブリ化防止、既存デブリの除去サービス |
| 強み | デブリ除去技術で世界トップクラス。各国宇宙機関との契約実績 |
2026年4月期上期の売上収益は26億1,900万円(前年同期比+260.9%)と大幅な成長を遂げています。受注残高は290億円超と将来の成長パイプラインも充実しています。ただし、まだ赤字フェーズにあります。
宇宙空間で追跡されているデブリは約 3万個 (ESA 2025年報告)にのぼり、今後の衛星打上げ増加に伴いデブリ除去の需要は急速に拡大すると見込まれています。
投資のポイント: 宇宙デブリ除去という唯一無二の事業領域を持つ。市場はまだ黎明期だが、各国の規制強化に伴い需要拡大が期待される。赤字フェーズのため、リスク許容度が高い投資家向け。
衛星データ ── 宇宙から地球を見る目
小型SAR(合成開口レーダー)衛星は、天候や昼夜を問わず地表を観測できる技術です。防災、安全保障、インフラ監視など幅広い用途があり、日本からも複数のベンチャーが事業を展開しています。
QPS研究所(5595)|小型SAR衛星コンステレーション
世界最高クラスの分解能を持つ小型SAR衛星を開発
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 決算期 | 5月期 |
| 事業内容 | 小型SAR衛星の開発・製造・運用、地球観測データの提供 |
| 宇宙事業 | SAR衛星コンステレーションの構築、官公庁向けデータサービス |
| 強み | 世界最高クラスの高分解能。防衛省との連携で安全保障分野にも展開 |
2025年5月期は商用衛星の打上げが相次ぎ、8号機「アマテル-IV」、9号機「スサノオ-I」、10号機「ワダツミ-I」と 3機の商用機の打上げに成功 しました。官公庁からの受注増加により売上高は前期比で大幅増となりましたが、5号機の通信系不具合による減損損失(約16億円)が響き、最終損益は赤字でした。
宇宙戦略基金の採択や約80億円の資金調達により財務基盤を強化しています。
投資のポイント: SAR衛星コンステレーションの構築が進めば、安定的なデータ収益が見込める。防衛省との連携で安全保障分野の需要も期待。ただし、衛星の不具合リスクには注意が必要。
Synspective(290A)|SAR衛星データのソリューション企業
衛星データの「分析・活用」まで一気通貫で提供
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 決算期 | 12月期 |
| 事業内容 | 小型SAR衛星の開発・運用、衛星データ分析ソリューション |
| 宇宙事業 | SAR衛星「StriX」シリーズの開発、災害監視・インフラ管理ソリューション |
| 強み | 分解能と広域性を両立した独自衛星。データ分析までワンストップで提供 |
2024年12月に東証グロース市場に上場。2025年上期の売上高は前年同期比+28.0%と成長していますが、衛星の製造・打上げコストや量産体制の構築費用により営業損失は拡大しています。
2025年3月に米国子会社を設立し海外展開を加速。衛星量産拠点「大和テクノロジーセンター」の稼働開始により、コンステレーション構築のペースが上がる見込みです。自己資本比率は67.9%、現預金111億円と財務基盤は安定しています。
投資のポイント: 衛星の「製造」から「データ分析」まで一気通貫で行うビジネスモデルが特徴。上場間もないためボラティリティは高いが、衛星データ市場の成長とともに収益化が期待される。
その他の注目企業
直接的な宇宙ベンチャーではないものの、宇宙ビジネスに深く関わる日本企業もあります。
| 銘柄名 | コード | 宇宙との関わり |
|---|---|---|
| 三菱電機 | 6503 | 人工衛星の製造(準天頂衛星「みちびき」等) |
| NEC | 6701 | 衛星通信システム、「はやぶさ2」探査機の製造 |
| キヤノン電子 | 7739 | スペースワン(小型ロケット「カイロス」)の主要出資者 |
| 川崎重工業 | 7012 | 国際宇宙ステーション補給機の構造体製造 |
また、未上場企業では インターステラテクノロジズ (トヨタ子会社から70億円の出資を受けた北海道のロケットベンチャー)や スペースワン (キヤノン電子・IHIエアロスペース等が出資する小型ロケット企業)も注目されています。スペースワンは2026年2月に小型ロケット「カイロス」3号機の打上げを予定しています。
銘柄比較表
| 銘柄 | コード | 事業領域 | 時価総額 | 直近業績 | 投資タイプ |
|---|---|---|---|---|---|
| 三菱重工業 | 7011 | ロケット打上げ | 超大型 | 大幅増益 | 安定成長 |
| IHI | 7013 | ロケットエンジン | 大型 | 増益基調 | 安定成長+防衛 |
| ispace | 9348 | 月面探査 | 小型 | 赤字(売上倍増) | ハイリスク・ハイリターン |
| アストロスケールHD | 186A | デブリ除去 | 小型 | 赤字(売上急増) | ハイリスク・ハイリターン |
| QPS研究所 | 5595 | SAR衛星 | 小型 | 赤字(商用機打上げ) | ハイリスク・ハイリターン |
| Synspective | 290A | SAR衛星・分析 | 小型 | 赤字(上場直後) | ハイリスク・ハイリターン |
投資する際のポイント
宇宙関連投資の考え方
宇宙関連銘柄に投資する際は、以下の3つの視点で考えましょう。
| 視点 | 説明 | 該当銘柄 |
|---|---|---|
| インフラ(基盤) | ロケットやエンジンなど宇宙ビジネスの土台を提供 | 三菱重工業、IHI |
| サービス(応用) | 衛星データや月面輸送など宇宙を活用したサービス | ispace、QPS研究所、Synspective |
| ニッチトップ | 特定領域で世界的な競争力を持つ | アストロスケールHD |
投資する際の注意点
-
宇宙ベンチャーは赤字企業が多い :ispace、アストロスケール、QPS研究所、Synspectiveはいずれも赤字フェーズです。将来の成長に賭ける投資であり、黒字化までの資金余力や事業進捗を継続的にウォッチする必要があります
-
ミッション失敗リスクがある :ロケットの打上げ失敗や衛星の不具合は株価に大きな影響を与えます。ispaceのミッション1(2023年)では月面への軟着陸に失敗し株価が急落しました。技術リスクを理解した上で投資しましょう
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政策・規制が追い風 :日本政府の宇宙戦略基金(10年で1兆円)や防衛費増額は宇宙関連銘柄にとって強力な追い風です。ただし、政策変更のリスクも考慮しましょう
-
バリュエーションに注意 :宇宙ベンチャーはテーマ性の高さから期待先行で株価が上昇しやすい傾向があります。業績の裏付けがない株価上昇には注意が必要です
-
分散投資を心がける :宇宙ベンチャーはボラティリティが高いため、ポートフォリオの一部として組み込み、インフラ銘柄(三菱重工・IHI)とベンチャー銘柄を組み合わせるのが賢明です
こんな人におすすめ
| 投資スタイル | おすすめ銘柄 |
|---|---|
| 安定重視で宇宙テーマに投資したい | 三菱重工業、IHI(大型株の安定感) |
| 衛星データビジネスに興味がある | QPS研究所、Synspective |
| 月面探査のロマンに賭けたい | ispace |
| ユニークな事業テーマを狙いたい | アストロスケールHD(デブリ除去) |
| 分散投資したい | インフラ+ベンチャーの組み合わせ |
米国の宇宙関連銘柄にも注目
日本株だけでなく、米国市場にも有力な宇宙関連銘柄があります。
| 銘柄名 | ティッカー | 事業内容 | 注目ポイント |
|---|---|---|---|
| Rocket Lab | RKLB | 小型ロケット打上げ・衛星製造 | 2025年にElectronロケット18機打上げ成功(成功率100%)。年間売上は前年比30%超の成長 |
| SpaceX | 未上場 | ロケット打上げ・Starlink通信衛星 | 2026年中にIPOの可能性。評価額は1兆ドル超とも。Starlinkは衛星通信で世界最大 |
特に Rocket Lab は2025年12月に米宇宙開発庁(SDA)から 8億500万ドル(約1,200億円) の大型契約を獲得するなど、SpaceXに次ぐ民間ロケット企業として急成長しています。
Welvioでの活用
Welvioを使えば、宇宙関連銘柄をポートフォリオに組み込んだ際の資産配分バランスを確認できます。
宇宙関連銘柄は大型のインフラ企業(三菱重工業・IHI)と小型のベンチャー企業(ispace・アストロスケール等)で値動きの特性が大きく異なります。ベンチャー銘柄はミッションの成否や資金調達の発表で株価が急変動するため、ポートフォリオ全体に占める割合を定期的にチェックすることが重要です。Welvioの資産配分分析機能を活用して、テーマ投資のリスクが全体のバランスを崩していないか確認しましょう。